片頭痛治療剤
指定医薬品、要指示医薬品注）
ミグシス●錠５mg
Migsis● Tablets 5mg
塩酸ロメリジン錠
1999年７月作成（新様式第１版）
貯法：室温保存
使用期限：３年（最終年月をラベル・外箱等に記載）
注）注意－医師等の処方せん・指示により使用すること
IG 日本標準商品分類番号 ８７２１９
承認番号 21100AMZ00239
薬価収載 1999年５月
販売開始 1999年７月21日
【禁忌（次の患者には投与しないこと）】
1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.頭蓋内出血又はその疑いのある患者 [脳血流増加作用により、症状を悪化させるおそれがある｡]
3.脳梗塞急性期の患者 [急性期には、病巣部は代謝障害状態にあり、非病巣部の血流増加作用に伴い病巣部の血流低下を起こすおそれがある｡]
4.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人 [｢妊婦、産婦、授乳婦等への投与｣ の項参照]
【組成・性状】
1.組成
１錠中： 販売名 成分
ミグシス錠５mg
有効成分（含量） 塩酸ロメリジン（５mg）
2.性状
外形 直径 厚さ 重量 8.5mm 3.1mm 215mg 割線入り
識別コード U055
色調等 白色
【効能・効果】
片頭痛
【用法・用量】
通常、成人には塩酸ロメリジンとして１回５㎎を１日２回、
朝食後及び夕食後あるいは就寝前に経口投与する。
なお、症状に応じて適宜増減するが、
１日投与量として20㎎を超えないこと。
【使用上の注意】
1.慎重投与（次の患者には慎重に投与すること）
（1）重篤な肝機能障害のある患者 [本剤は主として肝臓で代謝され、また、胆汁へ排泄されるため、高い血中濃度が持続するおそれがある｡]
（2）QT延長の疑われる患者（心室性不整脈（torsades de pointes）、QT延長症候群、低カリウム血症、低カルシウム血症等）[｢その他の注意｣ の項参照]
（3）パーキンソニズムの患者 [類似化合物（塩酸フルナリジン等）で錐体外路症状の発現が報告されており、本剤においても症状が悪化するおそれがある｡]
（4）うつ状態又はその既往のある患者 [類似化合物（塩酸フルナリジン）で抑うつの発現が報告されており、本剤においても症状が悪化又は再発するおそれがある｡]
（5）高齢者 [｢高齢者への投与｣ の項参照]
2.重要な基本的注意
（1）本剤は片頭痛発作（月に２回以上）により日常生活に支障をきたしている患者に投与すること。
（2）本剤は発現した頭痛発作を緩解する薬剤ではないので、本剤投与中に頭痛発作が発現した場合には必要に応じて頭痛発作治療薬（酒石酸エルゴタミン・無水カフェイン等）を頓用させること。投与前にこのことを患者に十分に説明しておくこと。
（3）本剤投与中は症状の経過を十分に観察し、頭痛発作発現の消失・軽減により患者の日常生活への支障がなくなったら一旦本剤の投与を中止し、投与継続の必要性について検討すること。なお、症状の改善が認められない場合には、漫然と投与を継続しないこと。
（4）眠気等を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機
械の操作には従事させないよう注意すること。
3.相互作用
併用注意（併用に注意すること）
薬剤名等
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
降圧剤
併用により相互の作用を増強するおそれがある。
本剤によってもまた、血圧低下があらわれることがある。
4.副作用
調査症例数972例中、副作用発現症例は39例（4.0％）であり、副作用発現件数は延べ52件であった。その主なものは、眠気、めまい、ふらつき、悪心、ほてり感各３件（0.3％）等、また、臨床検査値の変動では、GPT上昇2.2％（18/822件）、GOT上昇1.7％（14/821件）、γ-GTP上昇1.4％（11/759件）、LDH上昇1.1％（9/793件）、Al-P上昇0.9％（7/804件）等であった。（承認時までの調査の集計）
（1）重大な副作用（類薬）
錐体外路症状、抑うつ：類似化合物（塩酸フルナリジン等）の投与により錐体外路症状、抑うつがあらわれたとの報告があるので、本剤においても観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
（2）その他の副作用
１～５％未満
0.1～１％未満
精神神経系
眠気、頭痛、頭重、めまい、頭がボーッとする、ふらつき
消化器
悪心、腹痛、下痢、軟便、便秘、食欲不振、心窩部痛、腹部不快感、胃腸障害、口内炎、口唇粘膜浮腫、口腔粘膜浮腫
肝臓注1）
GOT、GPT、γ-GTP、LDHの上昇
Al-Pの上昇
過敏症注2）
発疹
循環器
血圧低下
泌尿器
排尿障害、頻尿
その他
ほてり感、胸痛、●怠感、気分不良、背部つっぱり感、発汗、浮腫、悪寒、発熱、乳頭腫大
注1：異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと｡
注2：このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
5.高齢者への投与
（1）高齢者では用量に留意し、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。［本剤の臨床試験成績において、高齢者（65歳以上）と非高齢者の副作用発現率はそれぞれ5.6％（21例/372例）、6.8％（41例/600例）であり、差は認められていない。しかし、本剤は主として肝臓で代謝されること及び高齢者では肝臓の生理機能が低下していることが多いため、高い血中濃度が持続するおそれがある。］
（2）類似化合物（塩酸フルナリジン等）では、高齢者で錐体外路症状や抑うつが発現しやすいとの報告があるので、本剤においても観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与
（1）妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。[動物実験（ラット）で催奇形作用（骨格・外形異常）が報告されている｡]
（2）授乳婦
授乳中の婦人への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合には授乳を避けさせること。[動物実験（ラット）で母乳中へ移行することが報告されている｡]
7.小児等への投与
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない（使用経験がない）。
8.適用上の注意
薬剤交付時
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。[PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている｡]
9.その他の注意
（1）イヌで３カ月間経口投与試験を行った結果、15mg/kg/日以上投与で心電図上QT及びQTc間隔の延長が報告されている。
（2）イヌで３カ月間、12カ月間経口投与試験を行った結果、それぞれ15mg/kg/日以上、30mg/kg/日投与で歯肉腫脹、乳腺腫大が、また45mg/kg/日以上、7mg/kg/日以上投与で歯肉上皮の増殖が報告されている。
【薬物動態】
1.血中濃度1,2）
健常成人６名に塩酸ロメリジン10㎎を食後に単回経口投与したとき、血漿中ロメリジン濃度は投与4.8時間後に最高値に達し、投与後12時間までの消失半減期は3.4時間であった。なお、空腹時の投与では、食後の投与と比べ最高血漿中濃度到達時間は短縮したが、他の薬動力学的パラメータに影響はみられなかった。
薬物速度論的パラメータ（平均値±標準偏差）
投与量（mg）
例数
Cmax（ng/mL）
Tmax（h）
T1/2（-12h）a）
AUC0-12h（ng･h/mL）
10
6
7.7±2.7
4.8±1.3
3.4±0.6
45.5±15.1
a）投与後12時間までの消失半減期
健常成人５名に塩酸ロメリジン10㎎を１日１回14日間反復経口投与したときの血漿中ロメリジン濃度は10日目前後から定常状態に達し、α相及びβ相の消失半減期はそれぞれ3.0時間、108.3時間であった。
2.代謝3）
健常成人６名に塩酸ロメリジン40㎎を単回経口投与したときの血漿中にはロメリジンのほかに、代謝物として主にトリメトキシベンジル基のO-脱メチル体及びそのグルクロン酸抱合体、ピペラジン環の４位N-脱アルキル化によるベンズヒドリルピペラジン体が認められた。
（注）本剤の承認された１日用量は症状に応じて適宜増減するが、20㎎を超えないこととなっている。
3.[参考] 動物での吸収・分布・排泄4～6）
14C-塩酸ロメリジンを単回経口投与した場合、消化管から速やかにかつ良好に吸収された（ラット、イヌ）。肺、肝臓、脂肪、副腎、膵臓などの組織に高濃度に分布した（ラット）。胎児及び乳汁への移行が認められた（ラット）。単回投与後５日間で約10％が尿中に、約85％が糞中に排泄された（ラット、イヌ）。単回投与後48時間までの胆汁中への排泄率は約70％であり、その約80％が消化管から再吸収された（ラット）。
【臨床成績】7～10）
本剤の臨床試験では国際頭痛学会による頭痛分類及び診断基準11）に基づく片頭痛を対象とした。二重盲検比較試験を含む324例での有効率は55％（179例/324例）であった。また、プラセボを対照とした二重盲検比較試験において本剤の有効性が認められた。
【薬効薬理】
本剤は脳血管に対して選択的な血管収縮抑制作用を示すカルシウム拮抗薬であり、下記の作用が認められている。
1.脳血流増加作用12～14）
イヌ摘出脳動脈において高濃度K＋及びセロトニンによる収縮を抑制し、麻酔イヌの脳血流量を増加した。これらの作用は末梢血管よりも脳血管に対して選択的であった。
2.Spreading depressionに対する作用15,16）
ラットにおいてspreading depressionにより誘発される大脳皮質血流量の低下及びc-fos様免疫活性の発現に対して抑制作用を示した。ラット摘出海馬切片の低酸素負荷により誘発されるspreading depressionの発現時間を延長した。
3.神経原性炎症に対する作用17）
ラットにおいて三叉神経逆行性刺激による眼瞼及び鼻周囲の血管透過性の亢進を抑制したが、ヒスタミン、ブラジキニン及びサブスタンスPの皮内投与による皮膚の血管透過性の亢進には影響しなかった。
4.作用機序18～20）
血管平滑筋及び神経細胞内へのCa2＋流入を抑制し、血管収縮抑制作用及びspreading depressionに伴う脳血流量の低下及びc-fosの発現を抑制すると考えられる。
（1）モルモット大脳皮質膜標品のCa2＋チャネルへの3H-ニトレンジビン特異的結合を阻害した。
（2）イヌの摘出脳動脈標本へのKCl誘発45Ca流入、ラット褐色細胞腫PC12細胞におけるCa2＋の内向き電流を抑制した。
【有効成分に関する理化学的知見】
一般名：塩酸ロメリジン（lomerizine hydrochloride）
化学名：1-[bis（4-fluorophenyl）methyl]-4-（2,3,4-trimethoxybenzyl）piperazine dihydrochloride
分子式：C27H30F2N2O3・2HCl
分子量：541.46
構造式：
性状：白色の結晶性の粉末である。
メタノールに溶けやすく、エタノールにやや溶けやすく、無水酢酸又は水に溶けにくく、エーテルにほとんど溶けない。
【包装】
ミグシス錠５mg：140錠（PTP）
【主要文献】
1）酒井孝範ほか: 薬理と治療, 22, 4657-4662（1994）
2）中島光好ほか: 臨床医薬, 5, 1791-1811（1989）
3）粟田則男ほか: 薬理と治療, 22, 4663-4673（1994）
4）川島恒男ほか: 薬物動態, 5, 723-737（1990）
5）粟田則男ほか: 薬物動態, 9, 522-535（1994）
6）社内資料
7）後藤文男ほか: 薬理と治療, 22, 5031-5047（1994）
8）後藤文男ほか: 臨床評価, 23, 13-37（1995）
9）後藤文男ほか: 臨床評価, 23, 183-214（1995）
10）後藤文男ほか: 薬理と治療, 23, 1445-1460（1995）
11）Headache Classification Committee of the International Headache Society：Cephalalgia、8（Suppl.）、7（1988）
12）原田研吾ほか: 薬理と治療、25、167-178 （1997）
13）山田親臣ほか: 薬理と治療、25、179-184 （1997）
14）社内資料
15）M.Shimazawa,et al.：Br.J.Pharmacol.、115、1359-1368 （1995）
16）高木啓ほか: 日薬理誌、111、309-316（1998）
17）M.Hashimoto,et al.：Res.Commun.Mol.Pathol.Pharmacol.、97、79-94（1997）
18）T.Iwamoto,et al.：Jpn.J.Pharmacol.、48、241-247 （1998）
19）T.Iwamoto,et al.：J.Pharm.Pharmacol.、43、535-539 （1991）
20）T.Watano,et al.：Jpn.J.Pharmacol.、75、209-213（1997）
【文献請求先】
ファルマシア・アップジョン株式会社 学術情報室
〒163-1448東京都新宿区西新宿3-20-2
フリーダイアル.0120-417151