>>教養学部・虫シリーズ<<
改定：05/03/17
●セミとサソリと頭痛と前兆
- 片頭痛は、ぎらぎらと光の見える前兆（アウラ）が特徴です。
- この前兆と片頭痛とセミとサソリは、みな因縁により、繋がっているのです。
- 因縁のかなめは、ギリシャ神話の暁の女神、「エオスEos」です。
- エオスは恋多き女神で、つぎづぎと愛人を作りました。
- 第一が絶世の美男子、ティートノスです。
エオスは歳をとって醜くなった彼を一室に閉じ込めてしまいました。
かれは喋り続けて、あわれ、ついにセミになってしまいました。
それでセミのことを英語でcicada「失敬だ」というのですね。 - 第二の愛人は、のちに星座となるオリオンです。かれはサソリにより殺されました。
- 第三はケパロスです。
彼は妻と引き裂かれましたが、やっと愛妻のもとに返されました。
しかし狩りに出たとき、「愛らしきアウラよ、わたしを元気づけておくれ」とつぶやきました。
これを立ち聞きした妻を獲物と間違え槍でさし殺されてしてしました。 - ところがこのアウラ(Ａｕｒａ)というのはギリシャ語で「そよ風」のことだったのです。
いまでも独特の雰囲気をもった人を「オーラがでている」などといいますね。 - ケバロスというのはギリシャ語の「頭」を意味するkephale（ケパレー）にちなみます。
頭痛のことを、医学用語で、セファラルジアｃｅｐｈａｌａｌｇｉａ（ｃｅｐｈａ−は頭、ａｌｇｉａは痛み）といいます。 - 頭痛とアウラはギリシャ神話によって結びついていたのです。
- 以上のエピソードから頭痛の前兆はアウラと呼ばれるようになりました。
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●片頭痛の原因は頭の中のハチのせい？
- 「五寸釘寅吉」の話で片頭痛にセロトニンが関係している話をしました。
- ところで、ハチに刺されると飛び上がるほど痛いですね。
- そのハチの毒物の本態はセロトニン、キニン、アセチルコリン、アドレナリンなどです。
- ハチにさされたときの激痛はセロトニンとキニンのせいと考えられています。
- ところで片頭痛がなぜ起るかといいますと、ストレスなどにより血小板からセロトニンが遊離します。
- このセロトニンがＰ物質やブラジキニン（キニンの一種）を血管の周りに呼び出し、
血管の拡張と痛みを起こすためといわれています。 - つまりは頭の血管がハチに刺されたのと同じ状態になるわけ。
- 片頭痛がひどく痛いのも「むべなるかな」ですね。
- 注：スズメバチの毒液にはphospholipase, hyaruronidase, protease, kinins, mastoparans, vespid neurotoxinsなどを含みます（医学のあゆみ183:475,1977）
- ハチ毒については1. 横田敏勝. 名画と痛み. 東京: 南江堂; 2002.pp69-72
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●おそろしいクモのたたりの頭痛
- クモもハチと同じように毒をもっています。
- このクモにちなむ「くも膜」という膜が頭のなかにます⇒いわれ
- くも膜の下に出血する「くも膜下出血」というのは突然の激しい頭痛を起こすとてもおそろしい頭痛です。⇒くも膜下出血の解説
- すぐに脳神経外科で見てもらいましょう。
- 聖書にもくも膜下出血をおもわせる例の記載があります。⇒聖書に見られる頭痛
- 今年の夏、「土蜘蛛」という能を見てきました。土蜘蛛が源頼光やその家来に蜘蛛の糸を投げかけ、苦しめます。
- これを見ていて、くも膜下出血に苦しむ患者さんを思い出してしまいました。
- でも現在では、脳神経外科医がクモのたたりを退治してくれますよ。
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●片頭痛は虻のたたり(かも)
- 女性に片頭痛が多いのは女性ホルモンのエストロゲンの変動のためです。
- エストロゲンは動物の発情oestrusに関係するホルモンという意味で、ギリシャ語の虻に由来します。
- むかしイーオIoという美女がいました。ゼウス大神は彼女とねんごころになりました。
- それを察知した正妻ヘラが押しかけてきたので、ゼウスはイーオを白牛に変えました。
- ところがヘラは虻を送り、白牛を責めさいなまさせたのです。
- イーｵは苦しみもだえ、ギリシャからボスボラス海峡をわたりエジプトまで逃げていきました。
- ボスボラスとはbos（牛）+phoros（運ぶ）から来た地名なのです。
- 片頭痛のもとエストロゲンは、イーオを苦しめた悪役「虻」に由来するという逸話が隠されていたのです。
なにか意味深ですね。 - ちなみにゼウスがイーオのために送った可憐な花がスミレで、Ionといいます。英語ではvioletですね。
- イオニア海もこれに因みます。
- ヨード（臭素）は熱すると紫の蒸気を発するのでスミレに因み、iodineとなづけられました。
- 消毒薬イソジンはIsodineとつづります。iodineにsが入り込んだ命名です。おそらく「磯」に因んだのでしょう。
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